日本視能訓練士協会誌
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一般講演
角膜前後面屈折力を用いたトーリック眼内レンズモデル選択の検討
岡田 あかね宇野 裕奈子山村 彩則武 里奈玉置 明野小島 隆司
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2016 年 45 巻 p. 143-149

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抄録

【目的】前眼部Optical Coherence Tomography(以下OCT):SS-1000 CASIA(TOMEY社)の角膜前後面屈折力(以下Real-K)を用いてトーリック眼内レンズ(以下T-IOL)モデルを選択した症例の検討を行った。

【対象と方法】対象は、白内障手術にてT-IOL(SN6AT3-7, AlconまたはMicro355T3-4, HOYA)を挿入した20名29眼(平均年齢76.7歳 ± 8.0歳)。IOL度数決定は、Partial Coherence Interferometry(以下PCI, IOLMaster Advanced Technology Ver5.4, Carl Zeiss Meditec)による測定値でSRK/T式を用い、T-IOLモデル選択はそれぞれのIOLメーカー専用ウェブカリキュレータを用い、Real-Kを用いた。予測術後乱視と手術後3ヵ月時の自覚乱視の差、Real-KとPCIの角膜屈折力[PIC keratometric(以下PCI-K)]の乱視量を、直乱視、倒乱視症例別にベクトル解析した。PCI-Kを用いた場合のT-IOLモデル選択も計算した。

【結果】術後予測乱視と自覚乱視のベクトル差は平均0.60 D ± 0.31 Dであった。Real-Kを用い手術後自覚乱視が予測乱視 ± 0.5 D以内の症例(完全矯正)は62%であり、乱視軸の変化なく予測乱視0.5 Dより大きい症例(低矯正)は35%、乱視軸が反転し予測乱視0.5 Dより大きい症例(過矯正)は3%であった。角膜前面乱視別にみると、角膜前面直乱視では17%が過矯正、角膜前面倒乱視では45%が低矯正、それ以外は完全矯正であった。Real-KとPCI-Kの乱視量ベクトル差は全症例において平均0.49 D ± 0.31 Dであり、Real-KとPCI-Kの乱視量に有意な差は認めなかった。Real-KとPCI-Kで同じモデルが選択される症例は59%であった。

【結論】Real-Kを使用したT-IOL計算は従来の方法と遜色がなく、今後有望な方法として検討する必要があると思われた。

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© 2016 公益社団法人 日本視能訓練士協会
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