2016 年 45 巻 p. 323-329
【目的】日常生活の状態における両眼視力が0.7以上ある場合,黒板の文字が教室のどの席からでも確実に見えているのかを黒板の文字を使い中学生について調べた。また小学生から高校生までの児童生徒は自身の見え方をどの様に感じているのかについて複数の質問項目で見え方を尋ね、どの質問項目が黒板の文字の見え方を推測するのに適しているのかを調べることを目的とした。
【対象及び方法】平成25年4月22日から26年5月31日までに八本松病院眼科を受診した58例(6~18歳)を対象に外来にて問診、アンケート、視力検査、屈折検査、黒板を用いた調査を行い検討した。
【結果】黒板を用いた調査で、1963年に樋渡が調査した対象と同様に中学生27例について調べた所、5×5cmの文字を7m離れて読み取るには0.8以上の両眼視力が必要であった。また現在の中学校の標準的な教室の黒板から教室の後列の席までの平均距離の7.7mでは0.9以上、最長距離の8.7mでは1.0以上の両眼視力が必要であった。そして全例へのアンケート調査の結果、日常生活や教室での見え方を尋ねた3つの質問項目間で有意差は無かったが、「教室の一番後ろから見た時に黒板の字が良く見えるか」という質問項目に対して見えると回答した者が、実際に8.7mから黒板の文字を読んだ際に「見えた」と判定した割合が他の質問項目に比べて高かった。
【結論】黒板に一般的に書かれる5×5cmの文字を7m離れて読み取るには0.8以上の両眼視力が必要であった。現在の中学校の標準的な教室のどの席からでも5×5cmの文字を読み取るには 1.0 以上の両眼視力が必要であった。また「教室の一番後ろから見た時に黒板の字が良く見えるか」という質問項目が用意した3つの質問項目の中で最も実際の見え方に近い感触があった。