日本視能訓練士協会誌
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一般講演
上方視野欠損と下方視野欠損の読みへの影響
清水 みはる菅澤 淳戸成 匡宏濵村 美恵子中村 桂子稲泉 令巳子筒井 亜由美南 稔浩阿部 史絵真野 清佳飯田 朋美金本 菜都美池田 恒彦
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2017 年 46 巻 p. 107-117

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抄録

【目的】上下の視野欠損を有していても視力が比較的良好な場合、日常生活の不自由さは、周囲には理解されにくい。そこで読みを中心とした日常生活の問題を上方視野欠損と下方視野欠損で比較検討したので報告する。

【対象と方法】対象は、2015年9月から2016年6月までに大阪医科大学附属病院眼科を受診した上方視野欠損患者(以下、上方視野欠損群)および下方視野欠損患者(以下、下方視野欠損群)で、視力は良い方の視力が(0.4)以上の18例、年齢は50~89歳であった。視野はゴールドマン視野計を用い、中心はハンフリー10-2も測定した。読みに関しては、縦書きと横書き、および縦書きを横にしての読書速度を測定し、健常者(以下、健常群)20名を含め検討した。また、日常生活の不自由さをアンケート形式で聴取し、視野欠損の違いによる差があるか検討した。

【結果】読書速度(文字数/分)は、健常群、上方視野欠損群、下方視野欠損群の順で縦書き(345±55、259±66、240±103)、横書き(356±84、246±48、290±54)、縦書きを横にして(333±87、219±75、260±91)で、視野欠損群が健常群より劣っていた。上方視野欠損群では、縦書きより縦書きを横にする読み方が有意に低下していた。また、下方視野欠損群では、縦書きより横書きの方が速い傾向があった。下方視野欠損群で縦書きが著しく低下していた例では、横書きや縦書きを横にして読むと速くなった。個々の症例をみると、ハンフリー10-2で測定した中心部の詳細な視野が読書速度と関連があった。アンケート結果は、下方視野欠損群の方が移動に不自由を感じている例が多かった。

【結論】縦書きの文章が読みにくい下方視野欠損例では、縦書きの文章を横にして読む工夫が効果的であった。また、ハンフリー10-2は読み障害に影響する中心部の視野測定に有用であった。移動や日常生活には下方視野との関連が深く、移動に関しては特に下方の周辺視野が重要であると思われた。

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© 2017 公益社団法人 日本視能訓練士協会
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