日本視能訓練士協会誌
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一般講演
縞視力の視標コントラストの違いが視力値に及ぼす影響
稲垣 尚恵
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2019 年 48 巻 p. 81-88

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抄録

【目的】Teller Acuity CardsⅡ®(TACⅡ)は、6.2cpdより高い空間周波数で縞視標のコントラストが低いため(春日井他、2006)、コントラストの違いが検査結果にどのように影響するかが不明確である。そこで本研究では縞視標の空間周波数とコントラストを検査条件として独立して操作することにより、視標のコントラストの相違が縞視標の検出に与える影響を実験的に検討した。

【方法】対象は、眼疾患のない矯正視力1.2以上5名5眼(平均21.8±0.97歳)とした。TACⅡの視標のコントラストの実測に基づき、最大コントラスト(83.33%)と最小コントラスト(39.75%)を条件としてPC上に縞視標を呈示し、縞の方向を回答する2条件(PC-H、PC-L)と、TACⅡを用いて縞視標の位置(TAC-位置)あるいは方向(TAC-方向)を回答する2条件を設定した。計4条件の検査条件とTACⅡに対応した空間周波数7条件において正答割合を測定した。

【結果】(1)18.2cpd以下の空間周波数では検査条件による正答割合の差はなかった。(2)25.0cpd条件ではPC-LとTAC-方向の正答割合がPC-Hに対して有意に低かった。

【結論】TACⅡの高空間周波数カードでは縞視標のコントラストの低下により、視力が低く測定される可能性がある。

図3 ‌PC縞視標検査とTACⅡの検査における空間周波数と正答割合 Fullsize Image
エラーバーは片側SDを示す。 空間周波数25.0cpd:PC-HでPC-L(p<.05)、TACⅡ-方向(p<.05)に比べ正答割合が有意に高く、同様にTACⅡ-位置でPC-L(p<.05)、TACⅡ-方向(p<.05)に比べ正答割合が有意に高かった(多重比較;Bonferroni 法)。 PC-HとTACⅡ-位置との間、PC-LとTACⅡ-方向との間には有意差は認められなかった。 空間周波数36.5cpd:PC-HでTACⅡ-位置(p<.05)、TACⅡ-方向(p<.05)に比べ正答割合が有意に高く、同様にPC-LでTACⅡ-位置(p<.05)、TACⅡ-方向(p<.05)に比べ正答割合が有意に高かった(多重比較;Bonferroni 法)。 PC-HとPC-Lとの間、TACⅡ-位置とTACⅡ-方向との間には有意差は認められなかった。
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© 2019 公益社団法人 日本視能訓練士協会
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