日本視能訓練士協会誌
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後天性眼球運動障害の視能訓練
3.適応と予後について-後天性上斜筋麻痺例-
張田 陽子深井 小久子新井 紀子岡 真由美難波 哲子木村 久
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1998 年 26 巻 p. 235-241

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抄録

視能訓練により治癒度Iを獲得した片眼性後天性上斜筋麻痺20例を対象に,麻痺筋(上斜筋:以下SO)と拮抗筋(下斜筋:以下IO)の作動量をHess chartにより3型に分類し融像域の獲得経過を検討した。症例は,発症から治療開始までの期間で2グループに分類した。0.5~9か月をA群とし視能訓練施行例で14例,9~144か月をB群とし視能訓練と斜視手術施行例で6例である。SOとIOのズレが同量をI型,SOの不全が5°以上大きいズレをII型,IOの過動が5°以上大きいズレをIII型とした。I型は,正面視で融像があり訓練直後より融像域の改善が認められた。視能訓練の最適応は,II型であり正面視での融像を獲得させるとSOまたはIOの方向から融像の改善が認められた。III型は,SOとは反対側の下方視野内で融像が安定化し,SOの作用方向から融像の拡大が認められた。I型で自覚症状が強い場合は斜視手術の併用により良好な経過が得られた。眼球運動障害の程度により訓練の適応と予後の把握が可能であると推察された。

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