抄録
各種の遊離脂肪酸 (飽和, 分枝, 不飽和) の逆相HPLCによる分析を紫外波長可変型検出器を用い, 196~220nmで行った。溶出液としては, 0.1%リン酸/H2O-MeOH系を用いた。補正した保持容量の対数値vs.直鎖飽和脂肪酸の炭素数のプロットは良好な直線性を示した。この直線関係から分枝脂肪酸, 不飽和脂肪酸のC値 (測定した保持容量に相当する直鎖飽和脂肪酸の炭素数) を求めた。分枝脂肪酸及び若干の不飽和脂肪酸のC値は溶媒の水の含量に無関係であったが, 多不飽和脂肪酸の場合は水の含量が多い程C値が増大することが認められた。分枝脂肪酸や不飽和脂肪酸のC値はそれらの全炭素数よりも小さい値であった。すなわち, これらの酸は相当する直鎖飽和脂肪酸より極性が高い。不飽和脂肪酸の幾何異性体及び位置異性体の分離について試みた。cis体はtrans体よりも, 又, 二重結合が酸の極性基に近い方がより極性が高くなることがわかった。これらの事実は, 酸と逆相との相互作用から説明ができた。ラウリン酸 (12 : 0) に対する不飽和脂肪酸の相対感度について検討した。S (不飽和脂肪酸) /S (12 : 0) vs. Wt (不飽和脂肪酸)) /Wt (12 : 0) のプロットは良好な直線性を示した。このことは, 紫外低波長領域のみに吸収をもつ不飽和脂肪酸やその類縁化合物のHPLCによる定量分析において, 安定かつ安価で入手しやすい飽和脂肪酸が内部標準として使用できることを示している。12 : 0に対する不飽和脂肪酸の相対感度は検出波長が短い程大きな値を示した。12 : 0を内部標準として数種の植物油の不飽和脂肪酸の組成を調べたところ, GLCによる分析結果と良好な一致を示した。