油化学
Online ISSN : 1884-2003
ISSN-L : 0513-398X
スクシンイミドエステルの化学 (第2報)
水溶液中におけるN-アシロキシスクシンイミドと種々のアミノ酸との反応の速度論的研究
平田 博文中里 敏
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1986 年 35 巻 6 号 p. 438-443

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抄録

N-アシロキシスクシンイミド (1) (CN=2~8) と種々のアミノ酸, (2), から相当するN-アシル化合物を生成する反応を水溶液中 (7.0≦pH≦10.0), 25℃で速度論的に検討した。 (2) のアシル化は (1) の分解と競争的に起こり, 速度はV= (k1, d+k2 [2]) [1] で表すことができた。ここで, k1, dは (1) 分解の一次速度定数を, k2は (2) のアシル化の二次速度定数を示す。 (1) とアミノ酸との反応性はアルキル基の誘起効果の強さの順に従い, CN=2>CN=3>CN=4~CN=8の順であった。N-アシル化の速度は溶媒の塩基度 (pH) が増大するに伴い増加することが認められた。また, pH<pKa-1.5ではlogk2 vs. pHのプロットは直線性を示し, その傾きは1であった。pH=pKa-1での二次速度定数 (k2) は (2) の求核性と良好な相関性を示した。すなわち, logk2 vs. pKaのプロットは良好な直線性を示し, その傾きは約0.7であった。速度比, k2/k1, d, は溶媒の塩基度 (pH) に対して極大値, (pH) max, を有し, (pH) max=0.6pKa+3.0で表すことができた。速度比, 10-3 k2/k1, d, は若干のアミノ酸の場合を除いて1より大きいことが認められた。以上の結果から, (1) によるアミノ酸のアシル化は遊離のアミノ基が (1) のエステル基のカルボニル炭素を求核的に攻撃することにより起こることが明らかになった。さらに, (1) がタンパク質のN-アシル化剤として利用できることが示唆された。

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