1988 年 37 巻 3 号 p. 171-176
二相系 (水-有機溶媒) において酵素反応を行うことを目的とした。モデル酵素として, ダイズより得られたリポキシゲナーゼ (LG) を用い, N-スクシンイミジルベンゾエート (1) でアミノ基を修飾し二相系 (水-ヘキサン) での酵素反応を試みた。
基質 (リノール酸) を溶かしたヘキサン溶液に, 酵素を溶かした水溶液を加えた二相系においては, 未修飾のLGは, 不安定でヘキサン中のリノール酸はほとんど酸化されなかった。しかし, (1) で修飾したLGはある程度ヘキサンに対し安定であり, またヘキサン中のリノール酸の酸化が観察された。また安定性及び反応性は, 修飾率が高い程大きく, すなわち酵素の疎水性を上げる程安定性及び反応性は, 増大することがわかった。また, このような二相系での反応性は (1) で修飾したBSAを加えることによっても見られるということから, (1) により修飾されたタンパク質が, この系での安定性及び反応性に寄与するものと考えられた。
以上の結果から (1) が酵素のヘキサンに対する安定性を高める修飾試薬として使用できるものと推論できる。