1989 年 38 巻 1 号 p. 53-59
著者らはかんきつ (柑橘) 類果皮中の生理活性物質に関する研究の一環として, 温州みかん成熟果皮と未熟果皮のフラボノイド配糖体の差異を検討する目的で本研究を行った。その結果, 摘果温州みかん果皮中から11種のフラボノイド配糖体の分離に成功した。各成分の構造は各種スペクトルの測定結果からリモシトリン3-β-D-グルコシド (1), ナリルチン (4), ルチン (5), ナルシシン (6), ヘスペリジン (7), 3-ヒドロキシ-5, 6, 7, 8, 3', 4'-ヘキサメトキシフラボン3-β-D-グルコシド (8), 6, 8-ジ-C-グルコシルアピゲニン (11), 3, 8-ジ-グルコシルアピゲニン (12), 3, 7, 4'-トリヒドロキシ-5, 6, 8, 3'-テトラメトキシフラボン3-β-D-グルコシド (13), 3, 7, 4'-トリヒドロキシ-5, 6, 8, 3'-テトラメトキシフラボン3-O- {[3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル (1→6)] -β-D-グルコシド} (14) 及びリモシトリン3-O- {[3-ヒドロキシ-3-メチルグルタリル (1→6)] -β-D-グルコシド} (15) と決定した。また, 温州みかん成熟果皮には存在しなかった (11) ~ (15) の5種の成分を分離し, 成熟果皮と未熟果皮に大きな差異があることを確認した。さらにSHR-SPに対する静脈内投与で生理活性の検討を行い, 構造と生理活性について考察を加えた。なお, 今回単離した成分のうち (13), (14) 及び (15) は新規フラボノイド配糖体である。