油化学
Online ISSN : 1884-2003
ISSN-L : 0513-398X
スクシンイミドエステルの化学 (第13報)
N-アシロキシスクシンイミドを用いたブタすい臓α-アミラーゼの化学修飾によるマルトシダーゼ活性の増大
石川 一彦平田 博文
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1989 年 38 巻 1 号 p. 60-64

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抄録

ブタすい臓α-アミラーゼ (PPA) はN-アシロキシスクシンイミド (1) によりアシル化されアミラーゼ活性 [オリゴ糖のα-D- (1, 4) 結合の水解活性] は約35~15%に低下したがマルトシダーゼ活性 [p-ニトロフェニルα-D-マルトシド (G2-PNP) の水解活性] は200%以上に増大した。また, この修飾によりアミラーゼ活性のKm値は影響を受けなかったがマルトシダーゼ活性のKm値は増大した。
白インゲン豆 (Phaseolus vulgaris) から精製されたタンパク質性のα-アミラーゼインヒビター (phaseolamin) はPPAのアミラーゼ及びマルトシダーゼ両活性を阻害する。しかし修飾されたPPAについては, アラミーゼ活性は完全に阻害されたがマルトシダーゼ活性は完全に阻害されなかった。
以上の結果よりPPAのLys残基はオリゴ糖のα-D- (1, 4) グルコシド結合の水解には直接関与しないがG2-PNPの水解にある程度関与しているものと思われる。さらに, このインヒビターは修飾されたPPAのG2-PNPに対する活性部位には影響を与えにくくなっているものと考えられる。
この研究は (1) を使用した化学修飾を行うことにより酵素活性を増大させることができた興味ある研究の一つである。

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