精製食用油の酸化に含有カロテノイドがどのような役割を果たしているかを, 特にその酸化促進効果の発現の観点から検討した。β-カロテンとその酸化生成物を試験油 (リノール酸メチル, 大豆トリグリセリド及び精製なたね油) に添加して光酸化あるいは暗所自動酸化させたところ, 自動酸化の場合には, β-カロテンの酸化促進作用がしばしば認められ, 特にβ-カロテン添加前の試験油が劣化している時は顕著であった。一方, 光酸化の場合には, β-カロテンは酸化防止的に働くのが一般的であった。酸化促進性は, 未変化のβ-カロテンやそれが極度に酸化したものによっては発現されず, β-カロテンの中間酸化生成物が, 脂質酸化の連鎖反応の開始剤として働いた結果生じたものと考えられた。しかし, 普通の食用油脂, 特に植物油にはかなりの量のトコフェロールが含まれているので, カロテノイドが酸化促進剤として働くことは多くないものと思われる。