油化学
Online ISSN : 1884-2003
ISSN-L : 0513-398X
有機金属液晶の構造と性質
高橋 成年松原 浩香春 武史
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1990 年 39 巻 10 号 p. 805-811

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抄録

物質の状態は, 気体, 液体, 固体の3状態に限られたものではなく, それらの中間の状態に属するものもある。液晶はまさにそれで, 液体と固体の中間の状態として理解される。形態は液体, 従ってどの様な形状でもとりうることや光学的異方性を示し, かつ電場に応答するなどの性質がマイクロエレクトロニクス用表示材料としての要求に合致し, 種々の表示用に, 更に今日ではテレビやマイコンなどの大型画面表示にも利用され始めたのはご存知の通りである。液晶は, このような表示材料以外にも, 他の材料には見られない特徴を持つ中間相材料として, 各種のセンサーや光スイッチなどにも利用されている。しかし, 最近の材料科学の進展に伴って, 液晶にも更に高度な機能, 極限的な性質が求められている。それらの要求に対応すべく, 強誘電性液晶や反強誘電性液晶などについての研究が盛んになってきた。
液晶を初めて見いだしたのは生物学者であり, 表示材料としての利用を可能にしたのは物理と化学両分野からの研究成果である。液晶の研究は有機金属化学とも大いに関連を持ち始めた。一つには有機金属化学の分野で見いだされた新しい有機合成法が液晶の合成に応用され始めた点を挙げることができる。液晶化合物には, 後述のように, 相当複雑な分子構造が要求されるが, その構造を構築するために, 例えばパラジウムやニッケル触媒を用いるクロスカップリング反応あるいは不斉合成反応などは極めて有用である。他方, 有機金属の物性研究の一つとして新規な機能性液晶を目指した有機金属液晶の開発研究が始められている。金属の特性が液晶の高機能化に結び付くことが期待できるからである。本稿では, 後者の話題を取り上げ, 筆者らが行っているホウ素を含む液晶を中心に, 有機金属液晶の構造とその性質についての研究を紹介しよう。

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