日本油化学会誌
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老化脳と脂質栄養
安藤 進
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1999 年 48 巻 10 号 p. 1033-1040,1197

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抄録

老化に伴うニューロン機能の低下は, シナプス伝達障害に由来すると考えられる。脳としての機能低下は記憶障害で明らかにされ, その根底にあるメカニズムとしてシナプス伝達障害が証明されている。シナプス機能低下は, 脂質との関わりではシナプス膜の加齢による脂質組成と物理化学的性質の変化によって説明される。コレステロール/リン脂質(C/P)比と細胞膜内の脂質非対称性分布が, 膜の受容体機能とそれにつづくシグナル伝達機構の制御に重要な役割を果たしていると考えられる。
脂質栄養学の視点から, 食物脂質のシナプス機能と, ひいては神経機能への効果を議論し, 特に摂取脂質の量と質に焦点があてられる。脂質の質については, 飽和酸, 多価不飽和酸, とりわけn-6とn-3系列の生理的効果が考察される。それら効果の分子機構も提示されている。最後に, アルツハイマー病やパーキンソン病などの病理に対して複合脂質を用いる薬理学的アプローチについても触れる。

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