2017 年 10 巻 1 号 p. 63-67
熱中症による労働災害は地球温暖化の影響に伴い近年増加傾向にある.熱中症に至らない場合でも,暑さそのものが作業効率の低下を招くため,その対策が必要とされる.これまでの熱中症対策は,水分補給や体調管理など労働者自身に任される部分が大きく,また対策製品は皮膚表面を部分的に冷却する方法が多く,深部体温を下げるような対策はないのが現状である.本稿では,はじめに熱中症による労働災害の現状を死傷病報告と救急搬送のデータから解説する.また現在流通している熱中症対策製品の一例を取り上げ,その効果の限界について論じる.そして新しい熱中症対策の技術として,現場応用を目的とした実用的な研究と,様々なテクノロジーを駆使し近い将来実現されることが見込まれるシステムについて解説する.