2024 年 17 巻 1 号 p. 19-26
風力発電の導入量増加と風車の大型化に伴い,風車の雷撃被害が増加傾向にあり,特にブレードの破損は損失が大きい.現在,ブレードの先端に導体部を取り付けて雷を捕捉するレセプタの導入が主なブレードの雷保護手法であるが,捕捉されずレセプタ外に着雷し,破損を引き起こす例がある.よってレセプタ外着雷時に破損なくレセプタへ雷電流を導くことのできる手法の確立が急務となっており,本研究ではブレード表面に避雷塗膜を形成することによる保護を目指している.塗膜は表面の導電性で2種に分類され,それぞれで異なる保護システムを持つ.導電性塗膜は内部の導電性粒子が互いに接触する構造であり,電界集中を緩和し,また塗膜内部の放電経路形成を素早く完了させることにより保護を可能とする.一方,非導電性避雷塗膜は内部の導電性粒子が互いに空隙を保ち固定された構造であり,沿面放電路を形成する先駆現象である,沿面ストリーマの進展を促進することにより保護を可能とする.またそれぞれの塗膜について,環境負荷による保護能力の変化を調査した結果,導電性塗膜は保護能力を容易に失った一方,非導電性塗膜は保護能力の変化が見られなかった.そのため,風車ブレードへの適用に適するのは非導電性塗膜であると考えられる.