労働安全衛生研究
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原著論文
ハンドヘルド蛍光X線分析計の作業環境管理への応用
—補助金属板FP法による二酸化チタン測定—
鷹屋 光俊 山田 丸篠原 也寸志
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2015 年 8 巻 2 号 p. 71-78

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抄録

軽量で,電池による駆動が可能なハンドヘルド型蛍光X線分析計(HHXRF)を用い,作業環境空気中の二酸化チタン濃度を迅速に測定する方法を検討した.二酸化チタンのブタノール懸濁液をメンブランフィルターでろ過して調製した模擬試料を測定試料とし,精密測定可能な卓上型蛍光X線分析計(卓上型)とHHXRFの測定結果を比較した.HHXRF測定は,合金種判定用のファンダメンタルパラメータ(FP)計算を行う機種を使用し,フィルター試料をチタンを含まない金属板(補助金属板)の上にのせ,チタンを補助金属板の微量不純物と装置に認識させ測定する方法で測定を試みた.予備検討により,補助金属板として銅を選択した.卓上型とHHXRFの測定結果はほぼ一致した.HHXRFによる測定結果は,メンブランフィルターの素材の影響を受けたが,二酸化チタンの粒径,ルチル型とアナタース型の違いによる有意な結果の差はなかった.HHXRFの測定値の相対誤差が10%未満となる点を定量下限とすると,フィルターあたり25 µgのチタンの分析が行えた.これは,現在提案されているナノ二酸化チタンの日本産業衛生学会の許容濃度0.3 mg/m3を超えているかどうかをばく露濃度測定用の2.5 L/minサンプラーを用い,33分の捕集時間で判定可能であることを示しており,HHXRFによる測定によりばく露リスクのスクリーニングが十分可能であるという結論が得られた.

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© 2015 独立行政法人労働安全衛生総合研究所
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