2016 年 9 巻 1 号 p. 3-8
感電死亡災害は,労働安全衛生法および労働安全衛生規則が1972年に制定されて以降,減少傾向を維持しているが,これまでに年間ゼロ件になったことは一度もなく,国内外ではさらなる防止策の検討が求められている.例えばキュービクル内の狭隘な場所で作業する際,その場所に適した絶縁用防具を使用できないことが原因で,感電災害が発生することもある.このように狭隘な場所でも使用可能な絶縁用防具の設計指針の検討が求められている.本研究では,充電部の防護だけでなく,活線近接作業時に感電の危険性のある充電部を確認しながら作業できる絶縁用防具の設計に指針を与えることを目的として,AC絶縁用防具の基礎的検討を行った.実験研究では,狭隘な場所でも使用できる絶縁用防具の設計に指針を与えるために,二種類の絶縁体からなる絶縁用防具の耐電圧と使用電圧に関する基礎的なデータを得ることができた.本研究で得られた成果は,今後発生する可能性のある感電災害の防止に役立つといえる.