2022 年 42 巻 1 号 p. 15-21
症例は15歳男児.バスケットボール中に受傷した骨端線閉鎖前の膝蓋骨骨軟骨損傷を伴う外傷性膝蓋骨初回脱臼に対し,骨軟骨接合術および半腱様筋腱を用いた内側膝蓋大腿靱帯再建術を行った.手術は,膝関節鏡にて骨軟骨片を摘出後,関節切開し,骨軟骨片を吸収ピンとナイロン糸で固定した.内側膝蓋大腿靱帯再建は,大腿骨付着部に骨孔を作製せず,骨溝を作製後スーチャーアンカーを用いて移植腱の中央部を固定し,骨膜で被覆した.膝蓋骨側は,膝蓋骨に骨膜下トンネルを作製し,スーチャーアンカーを用いて2束の移植腱を膝屈曲角度45度で固定した.術後28ヵ月の最終経過観察時,右膝関節可動域は伸展0度,屈曲140度と制限はなく,Patella apprehension testは陰性であった.術後28ヵ月の単純X線およびMRI軸射像では膝蓋骨は整復され,内側関節面の骨軟骨片は癒合した.Lysholm scoreは100点,Kujala scoreは81点であった.本法は,骨端線閉鎖前の外傷性膝蓋骨脱臼に対して選択肢の一つとなる術式と考えられた.