2022 年 41 巻 3 号 p. 356-362
今回,精神症状に伴う暴力の問題で,青年期から精神科入退院を繰り返し,医療観察法入院処遇となった統合失調症患者に関わる機会を得た.本報告の目的は,事例報告と合わせて,医療観察法病棟でのIADL訓練を主とした生活能力訓練の意義について考察することにある.事例は,薬物療法を基盤に,プログラム時間外での日常的なIADL訓練やショートケアを模したグループへの参加といった生活能力訓練に取り組んだ.その結果,社会的機能が改善し施設入所に至った.病棟内で日常的に生活能力訓練が実施可能な環境を整えることは,対象者の能動性をひき出すとともに,退院後の生活イメージを検討・共有していくための有効な手段となり得る.