2002 年 37 巻 p. 253-258
交通渋滞の緩和と大気汚染問題への対応を目的として,各種のTDM施策が検討されている.ロードプライシングは,一連のTDM施策のなかでも特に注目される経済的誘導施策であり,東京都心部への導入も検討されている段階にある.本研究では,このロードプライシング政策が,低所得者に対して相対的に大きな影響を与えること,すなわち所得逆進的な問題をもつとされていることに着目し,その緩和策を探ることを目的とする.まず,この所得間公平性を定量的に評価できる分析手法として,利用者の手段と経路の選択行動とネットワークでの混雑を整合的に考慮しつつ,個人間の異質性をも考慮しうるモデルを提示する.このモデルを用いて,単純なネットワークにおいて,ロードプライシング政策が所得逆進性を持つことを確認し,その問題の解決策について議論する.最後に,東京都市圏の自動車・鉄道ネットワークに対してモデルを適用し,現実の政策に関連した逆進性の数値を具体的に提示し,その緩和策の有効性,留意すべき点を議論する.