抄録
青木により提案された確率論的都市モデルは熱力学分子モデルによく類似している。この類似性に注目し、熱力学におけるエントロピー、自由エネルギーに相当する概念を都市モデルに導入した。とくに、都市の安定均衡状態は、自由エネルギーに相当する F関数の値が最小化されるところで達成されることを示した。これらの概念と統計力学の平均場理論を用いることで、都市の均衡状態に関し、パラメータの値によって安定均衡状態がひとつの場合と二つの場合がありうることが分かった。後者の場合では、規制誘導・補助等の都市コントロールにより都市のパラメータが徐々に変化させたとしても均衡状態は不連続的に変化する場合もあることが判明した。この事実は、都市全体の活性化・沈静化が都市制御上重要であることを示している。