抄録
防災のための土地利用規制の重要性は我が国でもかねて指摘されているが、未だ十分に取り組みが進んでいるとは言えない。一方フランスでは防災に関する土地利用規制が行われてきており、30年近い制度運用の蓄積がある。その特徴として、(1)通常の都市計画と別系統の災害防止に特化した計画制度を用いていること(2)現実的なゾーニングによる土地利用規制を行っていること(3)政策手段が総合的でPPRと呼ばれる土地利用計画制度を中心に関連制度が緊密に結び付けられていること(4)国の直接的な役割が大きいこと、などが挙げられ、事前の防災政策強化の流れにあることも特徴的である。我が国同様フランスでも様々な困難に直面しているのは事実であるが、本論文では関連諸制度を含めたフランスの防災型土地利用規制全体の特徴を考察し、わが国の政策への示唆を抽出した。