都市計画論文集
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南洋群島・旧日本委任統治領における開拓の実態と現状に関する研究
パラオ共和国バベルダオブ島の農地開拓とボーキサイト採掘の事例
飯田 晶子大澤 啓志石川 幹子
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ジャーナル オープンアクセス

2011 年 46 巻 3 号 p. 319-324

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抄録

本研究では、南洋群島の旧日本委任統治領、パラオ共和国バベルダオブ島の3つの流域で行われた農地開拓とボーキサイト採掘を事例に、開拓の実態と現代への影響を分析した。農地開拓では、島内に4つの指定開拓村が設置され、1940年には合計1671人が2255町歩の土地に暮らし、主にパイナップルやキャッサバが栽培された。一方で、日本人が撤退した後65年を経た現代においても、当時の森林伐採と土地収奪的な営農による植生への影響、および、移入種Falcataria moluccanaによる固有種への影響が見られる。ボーキサイト採掘地は、島内2カ所に合計106ha設置され、島の一大産業であった。開拓面積は小さいものの、表土を剥がしとったために、採掘当時は多量の土砂が流出し、湿地と沿岸域に堆積した。また、パラオ人集落でも、土砂の埋立てと集落移転、インフラ設備の再利用、産業遺産の観光化など、少なからず日本の影響が見られる。開拓はいずれも水系を軸として流域を単位に進められており、開拓の影響は沿岸の生態系やパラオ人集落など、流域内の自然や社会に対して広域、かつ長期にわたる影響を与えている。

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© 2011 公益社団法人 日本都市計画学会
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