2013 年 48 巻 3 号 p. 339-344
我が国において人口減少は深刻な社会問題とされる.本論文は人口が一様分布した線形市場を考え,人口減少下のサービス供給体制の持続可能性を,立地論的方法により検討するものである.消費者のサービス需要は非弾力的であり,効用は財需要量と宅地面積からなり,人口減少後も従前の効用水準が維持されるものと仮定する. 初期状態は空間的独占競争の結果として与えられるとすると,人口減少が生じれば既存施設は赤字になるから施設の統廃合が必要になるが,最善解としての完全再配置は現実的ではない.本論文では施設配置の次善策として2通りの方法を考える.1つ目はは人口減少後も人口均等分布が維持される条件下で,統廃合を行う方法である.この場合,撤退施設周辺の地代は負になるので,均等分布を維持するには地代をゼロにするような補助金が必要になる.2つ目は従前の人口密度を維持したまま,人口を存続施設周辺に集住させる方法である.本論文では,初期状態として10個の施設が線分上に等間隔に配置される状態を考え,社会的厚生の意味で効率的な施設配置と,それを実現するための政府の介入の方法について,数値解析的に検討する.