2014 年 49 巻 3 号 p. 369-374
本研究では、大都市圏郊外に位置する岐阜県多治見市の住宅団地を対象とした調査に基づき、待ち時間が比較的短い高利便性乗合タクシーの成立可能性を検討した。大都市圏郊外の住宅団地では高齢化が進んでいる地域も多く、自動車の運転が困難になった高齢者の移動手段確保が課題になっている。本研究では、運転に不安がありながらも運転を続けている高齢者などの消極的運転者であっても、自家用車の保有と維持のために高額の出費をしている点に着目した。そこで、既存のバスよりも高価格であっても待ち時間が短いサービスが存在すれば、移動時刻の自由度を下げずに自家用車から転換することが可能になると考えた。一方でそのようなサービスでは、料金設定と需要、そして待ち時間が相互に影響を及ぼすため、サービス設計の段階でそれらの関係性を適切に把握する必要がある。本研究では、独自に構築した運行シミュレーションと、調査を基にした需要の概算から、高利便性乗合タクシーの採算性を検討する枠組みを提案するとともに、実際に多治見市の住宅地域を対象にして具体的に採算性の検討を行い、適切にサービス変数設定を行えば採算が取れる可能性があるという推計結果を得た。