抄録
本稿は、今まで等閑視されてきたソウルの蠶室地区開発総合計画(1970年)を取り上げ、その内容を詳らかにし、後継計画として策定された蠶室地区開発総合基本計画(1974年)と比較することで、両計画の再評価を行うものである。後者で初めて計画されたと評価されてきた内容、つまり土地区画整理事業に先立ってマスタープランを策定した点、敷地全体において住居・商業・緑地地域の土地利用を計画し、それらを大街区毎に配した点、建物、特に住棟の型式・規模・配置の計画を提示した点は、前者において既に試みられていた。但し、前者が単なる住宅地の建設を目標としていたのに対して、後者は大規模業務機能を加えた副都心として計画された点では異なっており、また大街区単位のアパート団地を複数集めた大団地を計画・実施した点では、以後の「新都市」や「新市街地」開発における大団地計画に影響を与えたと言える。