都市計画論文集
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多民族が集住する公共団地の再生事業における社会的包摂に関する一考察
トロント市リージェント・パーク団地再生事業を事例として
藤井 さやか
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ジャーナル オープンアクセス

2015 年 50 巻 3 号 p. 1045-1050

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抄録

海外では社会から取り残されている人々の生活の安定や社会参画を支援する社会的包摂の推進のための様々な取り組みが行われている。近年の公共住宅団地再生事業では、主な居住者である低所得者層や移民層が、事業によってさらに不利な状況に陥る問題と居住者の社会的包摂方策の必要性が指摘されている。本研究では、多様な人種、民族、文化的背景等を持つ居住者が混住する公共団地の再生事業における社会的包摂に着目し、トロント市リージェント・パーク団地を事例として、団地再生事業における社会的包摂のあり方の検討を行うことを目的としている。調査方法は、既往研究レビュー、開発者・行政計画資料及びウェブサイト等の公開情報の整理、関係者や専門家インタビューを行った。その結果、団地再生事業における社会的包摂方策は4つに分類できた。(1)再生事業の影響抑制、(2)コミュニティ強化に資する地区施設の充実、(3)学習機会や能力開発プログラム、(4)雇用創出による社会参画機会の提供。特に再生事業で建設された地区施設で行われている学習や能力開発のプログラムが就労や社会参加へとつながっていることが分かった。

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© 2015 公益社団法人 日本都市計画学会
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