茨城県下における住宅侵入盗被害率が全国で最も悪い水準であるが,既往研究の対象地は大都市にとどまり,これらの知見が茨城県下のような地方都市においても有効かは十分に検討されていない.そこで,茨城県下の複数市を対象に,住宅侵入盗被害の地理的分布の実態と,地区特性との関連を明らかにし,既存研究の知見と比較した.また,侵入手口に着目し,施錠/無施錠別に,被害と地区特性の関連を分析した.主要な結果としては,I)被害のホットスポットは分散傾向であり飛び地的に存在する,II)被害の多寡は大都市と共通の特徴も逆の特徴も持つ,III)無施錠被害は施錠被害と比較して農村的な特性を持った地区に多い,である.本研究によって,大都市で行われてきた既往研究とは異なる知見,さらには,施錠/無施錠別の被害特徴の知見が得られたことから,より地方都市の地区特性に適した,また,侵入手口に即した対策を実施することが可能になると考えられる.