2017 年 52 巻 1 号 p. 10-17
本論文は、「多核連携型コンパクトシティ」の考え方が自治体の計画でどのように現れているのかを概観するとともに、都市機能立地と核間公共交通が現状どのような状況にある場所が拠点として設定されているのかを、全国横断的に把握し明らかにするものである。具体的には、自治体の計画として都市計画マスタープラン、都市機能立地として商業・医療機能に着目して分析を行った。 得られた知見の概要は以下の通りである。(1)対象都市(79市)の46%(36都市)で「多核連携型コンパクトシティ」を明確に指向しており、目指すべき都市構造の1つとして定着している。(2)一方上述36都市中35都市の全415拠点のうち26%(108拠点)は、都市機能立地・核間公共交通の両面で利便性が低いと判断される。(3)三大都市圏を除くと、人口規模の小さな都市ほど、利便性が低い拠点が多く存在する傾向にあり、拠点が過剰に設定されている可能性が示唆される。