2017 年 52 巻 1 号 p. 55-62
「多文化共生」という言葉が近年広く地域社会に知られるようになり、その背景には1990年代の日系南米人など「ニューカマー」の急増があった。本稿は、多文化共生行政に約15年の歴史を持つ豊橋市を対象に、多文化共生のまちづくりの実務として各団体による多文化共生事業の現状及び課題の把握に主眼を置く。行政側及び民間団体による「コミュニケーション支援」、「生活支援」、「地域づくり」の三種の実施事業の現状について考察し、いくつかの課題を明らかにした上で、「多文化共生の複眼的な視点」、「社会的包摂の実現」、「外国人に優しい就労環境づくり」、「外国人市民による社会参加の向上」、「多文化共生人材の育成と活用」などを今後の多文化共生事業に向け提言としたい。また、多文化共生事業はサービスを受ける側の通勤圏等アクセス性を考慮する必要もあるため、今後の事業展開は需給両側の立場を考慮した空間的分析も必要と考える。