2017 年 52 巻 3 号 p. 1137-1142
本研究は、一都三県(埼玉県、千葉県、神奈川県)の自治体(市町村及び特別区)を対象としたアンケート調査を実施し、各自治体担当者の公共施設の現在の維持管理の状況と将来の見通しに関する認識を把握し、その上で人口動態、財政状況との関係を明らかにすることを目的とした。 その結果、公共施設の30年後の施設規模は、現状維持を想定している上下水道や道路、河川施設、公園等と、縮小を想定している庁舎や小中学校等、廃止や別の手段でサービス維持を想定している自治体もある高齢者施設や病院・診療所、公民館、公営住宅等に分けられた。そして人口減少率が大きい自治体ほど、人口減少によって生じる問題を予測し対策が進んでいた。一方、人口減少率が小さい自治体や人口が増加する自治体は、対策は今後行う予定である割合が大きく、具体的な取り組みは始まっていないことが明らかとなった。さらに、政策的経費率が低い自治体ほど人口動態への対策を講じている自治体が多く、維持管理が適切ではない公共施設数が少ない。一方、政策的経費率が高い自治体では、維持管理が適切ではない公共施設数が多い傾向があり、財政状況による違いが明らかとなった。