近年,モータリゼーションの進行や郊外型の都市構造への変化によって,都市内公共交通の利用者が減少している.そのため,既存の交通手段に代わり,デマンド型タクシーやライドシェアやカーシェアリングなど,様々な交通手段が新たな地域の公共交通サービスとして検討されている.本研究では多様な公共交通システムにおける優位性の理論的考察を目的として,アクセス移動の有無,路線・運行ダイヤ柔軟性の異なる5つの交通手段に関して,需要密度・利用者移動距離の変化による,一定のサービスレベルを実現できるコストの観点から,それぞれが優位となる基礎的条件を導出し,地域公共交通の導入実態を把握した上で,現実の都市の値での比較を行う.分析の結果,都市モデルを用いた理論的検討から,低需要密度におけるデマンド型交通,タクシー,カーシェアリングの優位性が示され,移動距離によっても優位性が変化する事を示した.また,自治体別に需要密度・移動距離を求めた結果,コミュニティバス導入地域は高需要密度・短距離移動であるのに対し,デマンド型導入地域は逆の特徴がある点,デマンド型交通導入地域におけるモデルの適合性が確認できた.