2017 年 52 巻 3 号 p. 316-322
親子世帯が近い距離に住まい、できる範囲で助け合いながら暮らす「近居」に注目が集まっている。しかし、子世帯からの支援が過度なものになれば、高齢者当人の外出行動を妨げ自立性を阻害するなどの恐れもある。これまでのところ、近居による「共助」が高齢者の外出行動に与える影響については殆ど検証されていない。外出行動は高齢者の肉体的・精神的健康を維持する上で重要な要素であり、近居がもたらす外出行動への影響を明らかにすることは、多世帯での同居・近居への自治体などによる政策的支援が広がりをみせるなか、喫緊の課題である。本研究では、親世帯・子世帯の居住地間の時間距離(以下「親子間距離」)の違いが生む、高齢者の外出行動の差異を把握するとともに、高齢者の生活上の不安や問題意識と合わせ、近居の相対的特徴を描出する。そこで、様々な居住形態が確認できる大都市圏郊外部を対象地域とした。本研究を通して、以下のことが明らかになった。1)親子間距離関係よって、高齢者の外出行動に差異が生じる。2)近居世帯の中でも、子世帯への依存度によって、外出行動に差が生じる。3)老後に対する不安は、子世帯への依存度や自立性に左右される。