2017 年 52 巻 3 号 p. 387-392
本研究では日射遮蔽の影響が最も顕著に表れる冬季に着目し、既往観測に基づき高層建築物の周辺市街地形成される冷気の分布と外気温の低下量を明らかにしたうえで、高層建築物による日射遮蔽と局所的な冷気の生成が周辺建物の建物熱負荷に及ぼす影響を明らかにする。その結果、既往観測の整理から、長時間、高層建築物の日影となる空間では一日を通して温度が周辺より0.5-1℃程度低くなっており、地面や建物表面への蓄冷現象が、日没後においても周囲より気温を低下させていることを確認した。さらに対象市街地の局所的な冷気を考慮した建物熱負荷計算により、高層建築物の日射遮蔽が建物熱負荷計算に及ぼす影響を分析した結果、高層建築物による建物の日射熱取得の変化によって建物熱負荷が日単位で5-15%程度増加することを確認した。さらに、局所的な冷気の影響を考慮した場合では建物熱負荷がさらに5%-10%程度増加することを確認した。