2017 年 52 巻 3 号 p. 413-420
人口減少下において効率的な都市構造を実現するために,日本の多くの都市でコンパクトシティ政策が採用されている.効率的な都市構造について,市民の効用,公共サービスのランニングコスト,移動コスト,転居コスト,施設建設コスト,住宅建設コストなど,様々な計画規範が考えられる.これらの計画規範のうちコンパクトシティ政策によって満足できるものはあるが,そのすべてを同時に満足できるかどうかは明確ではない.複数のステークホルダーが「コンパクトシティ化」という同じ言葉を使いながらも異なる規範の達成をめざし,その結果実現する特定の都市構造ではすべての規範を同時に達成できないために,結果的に一部のステークホルダーに不満が残ってしまう危険性がある.本研究では,コンパクトシティ政策を通して達成が目指されてきた各種の計画規範に着目する.その上で,複数の計画規範が同一の都市構造によって実現でき両立可能であるのか,あるいは同一の都市構造では実現不可能であり本質的にトレードオフの関係にあるのかを確認する.