都市計画論文集
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バンクーバー市都心部における容積移転制度を活用した開発手法とその運用
既存の開発許可プロセスを通じた歴史的建造物容積バンクからのボーナス取得
堀 裕典村山 顕人小泉 秀樹
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2017 年 52 巻 3 号 p. 617-623

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抄録

本研究では、カナダ、バンクーバー市において運用されている容積移転制度について、容積受け地(開発事業者側)の視点から、容積移転制度のメリットおよびデメリット、運用事例における移転容積分の増加による周辺住民との調整や行政の対応の手法等を明らかにすることで、容積移転制度のより効果的な運用方法を探ることを目的とした。調査対象は、短期間での審査が可能な既存の開発許可委員会で審査された物件をケーススタディ事例とした。研究方法は、法制度関連資料、市議会、開発許可委員会議事録の収集分析、市役所職員や地元建築家へのヒアリングおよび現地調査等によった。その結果、制度については、開発許可プロセスの中で、初期段階で必ずしも容積を買い取る必要はなく、開発許可プロセスの最終段階で決定すればよいという自由度があることが分かった。運用から見た近隣調整や手続き上の配慮については、問題なく容積の取得できているエリアもあるが、開発敷地によって、紛争が起こっているエリアも存在し、その場合も、行政が可能な限り歴史的移転容積を使う努力をしており、事業者側には、選択の自由度があることが分かった。

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© 2017 公益社団法人 日本都市計画学会
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