2017 年 52 巻 3 号 p. 717-722
都市内の交通流動を効率よく制御し,流動の錯綜や滞留,これらに伴う事故などの問題を軽減することは,古くからの都市計画の課題であり,幅広い分野の理論的・実証的研究がある.なかでも都市に発生する流動の量とそれらの交差を把握するための理論的研究については,矩形や円形の都市を対象に多くの研究結果が得られている.本研究では,有向リンクで構成される格子状交通網を持つ正方形都市モデルにおいて.交差点において直交する2つのリンクから流入する流動量の積を用いて流動交差量を計算する.経路選択ルールと交通網規模を変化させて,リンクを通過する流動量と交差点における流動の交差の量を求める.流動量と交差の量の都市モデル内の空間分布から,交通網の規模および経路選択が交差点における交差に与える影響について論じる.さらに数理計画問題を用いて都市全体の流動の交差量が最小となる経路選択を求めるとともに,外回り経路との比較を行う.解析の結果,流動交差量が最小となる経路選択ルールと外回り経路は,交差の総量に大きな違いがなく,外回り経路によって都市内の交通流動の交差を減少させることができることが明らかとなった.