2017 年 52 巻 3 号 p. 849-855
本研究は地域の交通環境の運動頻度や健康,生活満足度に与える影響を分析するものである.特に交通環境としてアクセシビリティを採用した.アクセシビリティは国土交通省の定義に従い,公共交通と自動車について,医療,買い物,公的サービスそれぞれ2種類の6種について計測を行った.さらにある市において6地区選択し,全世帯を対象としたアンケート調査を行い,住民の運動頻度や健康状態,生活満足度を計測した.これらの二つのデータの関係性をロジスティック回帰を用いて分析した.特に地区を選択しての抽出であることや,アクセシビリティを地区で共通にしたことから,マルチレベル解析を導入した.特に医療と買い物についてのアクセシビリティとこれらの指標の関係を分析したところ,複数の指標においてアクセシビリティが有意であることが分かった.特に健康や外出頻度などの健康に影響する指標に有意であり,これらの地区交通環境の改善が健康状態の改善につながる可能性が指摘できた.