2019 年 54 巻 1 号 p. 41-47
歴史的まちなみ景観への整備を行う際、地区内の特性について十分に把握したうえで誘導・規制の内容を検討することが求められる。本研究では、「建造物の固有性」と「地区全体の特性」の両面を有する、地区内の細かな範囲ごとにみられる「場所的特性」に着目をした。三重県亀山市関宿伝統的建造物群保存地区は、1980年の保存対策調査によって地区内の場所的特性が把握され、1981年制定の保存計画では東海道沿いの4区域ごとに特性や整備方針の記述がされている。現在も、整備内容について具体的な提案や決定を行っている行政や業者などの専門性を有した関係者間においては、地区内の各特性について認識が持たれている。痕跡調査や保存資料等だけで修理による復原の内容を決めることが難しい意匠の事例では、関係者間による場所的特性への認識により施主の選択にも違いがみられるなど、現在までの歴史的まちなみ景観の変容にも影響を与えていることがわかった。