本研究では、商業市街地での乳児連れ来街者の活発な回遊を促す環境整備の上で重要な役割があると考えられる授乳室と、回遊行動との関係を明らかにすることを目的としている。東京の集客市街地である自由が丘地区で実施した153サンプルのアンケートを通じて得られた、移動距離、入店店舗数、店舗滞在時間などの乳児連れ来街者の行動データから、行動の特徴ごとにタイプ分けし、授乳の傾向との関係を分析した。その結果、店舗に長時間滞在したり、多くの店舗を渡り歩く行動をする来街者の方が、他のグループよりも授乳するケースが多いことが明らかになった。また、店舗利用者でなくても利用できる公共施設や大型商業施設の授乳室利用者は、授乳行為がなかった来街者よりも物販店の入店回数が多く、滞在時間も長くなる傾向にあることが明らかになった。