本研究は、これまで都市計画の不在と乱開発が指摘されてきた1960年代の熱海市を対象に、都市計画の展開を明らかにするものである。熱海市では、高山英華が手がけた総合開発計画構想案(通称「高山プラン」)が1960年代の都市計画の指針となった。計画はマスタープランとして位置付けられ、都市計画法を根拠とする内容と観光施設整備など法的根拠を持たない内容の両方を組み入れた総合的なもので、多くの事業や都市計画決定が実施された。住民による海岸景観保全運動や行政と住民との間で眺望地益権の保護契約締結など、海岸景観への意識も高かった。しかし、市街地については、美観地区や高度地区など高山プランで記されたものの、都市の建築が作り出す景観に対する規制は実現されなかった。