2021 年 56 巻 3 号 p. 1443-1450
わが国の退職高齢者は、相談できる相手がほとんどおらず、社会からの断絶感を感じる場合が多い。退職高齢者が社会関係を再構築する過程において、自身が抱える悩みを他者に相談し、社会的紐帯を感じることができる社会を作り出すことが求められる。本研究では、退職後に高齢者の人付き合いが変化する過程を明らかにした。高齢者は、退職前の人付き合いの経験をもとに、退職後の人付き合いの継続意向を持つ。そして自身の意向に従い、地域内・外で新たな人付き合いを構築して、他者との付き合い方を変化させる。特に、地域内のテーマ縁(地域内テーマ縁)を通したつながりのなかで、深く相談し合える相談相手に出会う可能性が高いことが示された。