本研究では、都心部に位置し、市民緑地認定制度を用いた事例の中で、工場跡地を産業遺産として保存活用し、大規模な緑地の創造を都心部で積極的に行っている名古屋市のノリタケの森を研究対象とし、構想された経緯、設計プロセス、森と産業遺産のランドスケープデザインの内容、市民緑地認定制度に関して、企業、行政、設計者にヒアリングとともに、緑地の管理作業量の計測を行うことで、維持の課題を考察した。1)ノリタケの森を構想したのは、岩崎前社長の強い意志により、工場を産業遺産として保存活用し、既存の屋外空間を活用しながら設計が進められたこと、2)ノリタケの森地区計画による建蔽率40~60%と、煙突ひろばの軸と歩行者用通路の連結、3)ランドスケープの設計における南北軸と東西軸を強化させた産業遺産を一つにつなげる特徴、4) ノリタケの森の管理作業量では、「園路などの清掃」が約6割、「樹木の管理」が約2割、「花壇の管理」が約1割を占め、全体の管理労力も比較的大きいことが明らかになった。