2024 年 59 巻 3 号 p. 1147-1154
COVID-19の蔓延により,多くの労働者がテレワークを新たに導入した.テレワークはパンデミック終了後も継続的に行われると考えられている一方,テレワークが仕事に関係しない移動に与える影響については,意見が分かれている.本稿では東京においてテレワークが労働者の通勤以外の活動に与えた影響について解明する.GPSデータから得られる客観的な指標の利用およびパネルデータを用いた差の差分法の利用により,テレワークによる変化のみを抽出したバイアスのない評価を試みた.その結果,テレワークは自宅近くの訪問回数を増加させる一方で消費時間には影響を与えず,1回あたりの訪問時間が短くなっていることが判明した.また,mixed-MDCEVモデルを用いた個人異質性の分析により,テレワーカーの自宅近くの行動に関して多様性が失われていることが示された.