1990 年 10 巻 p. 239-248
明治以降の日本の道路整備は、鉄道優先政策のもとでなおざりにされてきた。そうした環境の中で、一地方都市が道路整備をどのようなスタンスで実行し得たのか。本論文では、明治・大正期の名古屋にスポットをあて、その道路造りを、時代背景、特にその財源という観点から記述する。まず、名古屋市の発展過程をいくつかの期に分類し、各時期ごとにその特徴と財源を示す。そして、大きな推進力の一つとなった「電鉄寄付金」について分析する。さらに、自治体による自助努力的な道路整備を支えるもう一つの推進力となった「熱意」についても、道路に対する意識の変遷という形で説明を試みる。