1997 年 17 巻 p. 313-321
近世から近代前期にかけてのわが国の内陸輸送の主体は、陸路の宿駅制度における人馬継立と舟運による河川交通であり、特に物資の大量輸送を担ったのは舟運であった。本稿では、近世から鉄道開通に至る間、栃木県の南西地域における大量輸送の動脈としての機能を担った渡良瀬川舟運を取り上げ、足利地域諸河岸の様相、輸送荷物の種類・集配等、足利地域を中心とした渡良瀬川舟運の大要を概観する中で、その果たした役割を整理・検討した。また、足利地域発展の大きな要因である織物産業に着目し、鉄道の開設に伴う織物輸送の舟運から鉄道への移行を踏まえ、渡良瀬川舟運の衰退過程について検討した。