2000 年 17 巻 p. 187-194
本論文は、交通改善に伴う便益計測手法において実務で一般的に用いられているMarshall-Dupuit型の消費者余剰 (MD) による計測が, より厳密な便益定義である等価的偏差 (EV) に対して, 十分な近似になり得るかを実証的に検証することを意図している. 本論文では, 既にMorisugi, Ueda and Leが提案している古典的消費者行動理論に基づく交通行動モデルを用いる. そして, わが国での地域間旅客流動等の実データを用いてパラメータを推定し, その上で, 交通改善に伴う便益をMDとEVによって計測し比較分析を行った. 限定的なケースではあるが, MDが十分にEVの近似として有効であることを実証している.