2000 年 17 巻 p. 327-336
本研究では都市経済学的アプローチを用いて、リスク認知のバイアスが災害危険度情報の提供効果に与える影響について分析を行った。災害危険度情報を利用した家計が主観的に認知するリスク水準は必ずしも正確なものになるとは限らない。したがって本研究では、そのような認知バイアスを明示的に考慮した上で家計の居住地選択行動をモデル化し、バイアスの程度によって異なる均衡土地利用状態を導出した.それらの結果を比較することにより、認知バイアスの存在下では、家計のリスク認知が正確な場合と比して災害危険度情報の提供効果が制限されていることや、認知バイアスが最適土地利用状態の競争的実現を阻害していること等を示した。