2000 年 17 巻 p. 369-380
大規模自然災害に関しては, 家計のモラルハザードや取引費用の存在により災害保険市場において効率的にリスクが配分されていない. そこで本研究は地方自治体による住民に対する強制保険のシステムを設計する. その際, 1) 中央政府が自治体間の所得移転を通じて災害リスクの地域間配分を行うシステム, 2) 各自治体が再保険市場を通じてリスクを分散するシステムに着目する. その結果, 中央政府による所得移転のシステムは社会的に最適なリスク配分を達成し, 一方, 再保険市場を通じた分権的方法は人口移動による外部経済を内部化できず, 効率的なリスク配分を導くことができないことを示す.