抄録
運転者の意思決定は, 典型的な不確実性下の意思決定問題である. 従来の認知科学的研究から, 不確実性下の意思決定は, 意思決定フレーム (意思決定問題の心的構成) に大きく影響を受けること, ならびに, 不確実性は可能範囲を用いて認識されていることが明らかにされてきている. 本研究では, これらの知見に基づいて, 運転者の出発時刻選択の意思決定モデルを提案した. そして, 運転者の行動, ならびに, 認知データを収集し, 提案したモデルの妥当性を実証データで検証した. データによって明らかにされた運転者の行動と認知の特性は, 従来の期待効用理論に基づいたモデルでは説明することが困難な一方で, 本モデルの基礎仮説群に一致するものであることが示された.